腎臓病について

I 腎臓の働き

腎臓はそら豆状の形をしていて、体の左右に2つあります。

主な仕事はもちろん尿を作ることですが、それはつまり体内環境を維持することです。具体的に説明すると、老廃物の排泄、水・電解質の調節、酸・塩基平衡の維持をするために尿を作り出し、体のバランスをとっているのです。

もしも体内の水の調節ができなくなると、余分な水がたまって足や顔がむくんだり、胸水がたまったり、血圧上昇や心不全をおこしてしまいます。また、老廃物が排泄できずに体中にたまると倦怠感や食欲不振が続き、進行すると精神障害や意識状態の悪化などの尿毒症症状がおこります。

さらに腎臓は、酸素を運ぶ赤血球の産生を調節するエリスロポエチンや血圧を調節するレニンを作りだしたり、骨のバランスに重要なカルシウム濃度を調節するビタミンD3の活性化を行います。よって、腎臓の力が低下すると貧血や高血圧や骨バランス低下がおこります。

II 慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)って?

慢性腎臓病とは、

腎機能を表す糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR)の低下

腎臓の障害を示唆する所見(尿潜血や尿蛋白陽性、腎臓の形態・組織異常、血清クレアチニン上昇など)がある

,②のいずれか、または両方が3ケ月以上慢性的に持続するものです。

慢性腎臓病になる原因疾患は多数あり、腎臓そのものが原因となる腎炎やネフローゼ症候群など(原発性腎疾患)の他に、糖尿病・高血圧症・高尿酸血症などの全身性疾患が原因となることもあります。近年は糖尿病が原因の糖尿病性腎症が増えています。

III 慢性腎臓病治療の重要性について

慢性腎臓病が進行し、GFR<15ml/m/1.73m2となると末期腎不全(end-stage kidney disease: ESKD)と呼ばれます。現在、透析や移植を必要とするESKD患者さんは世界中で増え続けています。ESKD患者数を少しでも減らしていくために、慢性腎臓病を早期に診断し治療をすることが重要です。

また、慢性腎臓病は心臓血管疾患の危険因子であることがわかっています。心臓病の危険性を減らすためにも慢性腎臓病の悪化を防ぐことが大切です。

IV 慢性腎臓病の治療

まずは原因疾患の治療が重要です。

血液・尿検査や腎生検などによって診断を行い、原発性腎疾患の場合は状態にあわせてステロイド・免疫抑制療法も行います。また、糖尿病や高血圧などの全身性疾患が原因の場合は、腎臓病の治療はもちろん、原因疾患の治療も同時に行う必要があります。

慢性腎臓病の治療は、生活習慣の改善(禁煙など)、食事治療、薬物療法などがあります。状態によって選択される治療は様々ですが、厳格な血圧コントロールは重要であり、塩分制限がポイントとなります。

IV 腎代替療法とは?

末期腎不全となって、それまでの治療法を続けても水分貯留や電解質異常や尿毒症症状などが悪化すると、腎臓の代わりに腎臓の仕事を行う治療(腎代替療法)が必要となります。

腎代替療法には血液透析(施設に通う通院透析と自宅で行う在宅透析があります)、腹膜透析、腎移植の3つの方法があり、患者さんの状態と希望にあわせて選択します。

V さいごに

腎臓病は通常初期には痛くも痒くもなく、症状がでる頃には進行していることが多いです。

ですから、健診などで尿検査異常や腎機能異常を指摘された時には、症状がなくてもきちんと診察を受けて早期診断・早期治療を行うことが大切です。